うどん紀行2013(春)

こう見えて僕はうどんが結構好きで、いろいろ味比べをしてきた。
初めて東京で富士そばのうどんを食った時は、その不味さにびっくりした。
麺はブヨブヨで腰がなく、汁は濃い口しょうゆで真っ黒。
基本的に西日本のうどんは麺に程よい腰があって、汁は薄口しょうゆを使う。
出汁はカツオとイリコでとり、その風味を邪魔しないようにするためだ。
と言っても塩分は薄口しょうゆのほうが濃度は高い。
※ぶっかけの場合は濃口のだし醤油。
誤解がないよう書いておくと、これはこれで蕎麦ならさほど問題はない。
うどんほどではないがゆで太郎のザル蕎麦は結構好きで、蕎麦屋の丼ものは悪くはない。

東京で西日本のうどんを食べるとしたら、牛丼屋のなか卯の京風うどんや、讃岐うどんでははなまるうどん丸亀製麺などのチェーン展開している店しかない。
それはそれで悪くはないが、残念ながら門仲にはいずれもないので、
食べたくなったらヒガシマル醤油のうどん出汁と讃岐うどんの乾麺を使って自作うどんを食っている。
でも、やっぱり本場とは全然違う。
本場うどん県の麺は乾麺のそれよりも太いし腰が強い。
出汁にしても、本場ではぶっかけとか、出汁醤油とかで食べるだけでなく、選べる具材も豊富なのだ。
それと、麺は大中小とあるが小でも十分量があって、東京とは価格が全く違う。
東京での相場が500円に対しうどん県では一般店でない限り200円を超えない。
ここで一般店と書いたが、うどん県の店のシステムは3つに分かれる。
「一般店」は通常のうどん屋で机で注文して持ってきてくれる。
あとは「セルフ」と「製麺所」という種類があって、この二つは分かりやすく言えばカフェテリア方式である。
そのシステムもそれぞれの店によって千差万別で
すごいところでは道久製麺所とか茹でた面だけを提供して、どんぶり、箸も自分で持っていく究極のセルフも存在する。
ここでは一玉75円である。

基本的な「セルフ」と「製麺所」の注文手順は
1.麺を注文する
  大中小か、あつかひやかを言う。
2.トッピングを選ぶ
  天ぷらやアゲなどをのせる。
3.薬味をのせる。
  ネギ、ショウガ、大根おろし、天かすなど店により異なる。
4.出汁やぶっかけ出汁、醤油をかける
  出汁はタンクから注ぎ、ぶっかけ出汁や醤油は卓上にまとめて置かれていることが多い。
5.食後に器を返却する
 店のルールに従ってゴミをわける。
ということ。
基本的にうどん県では「セルフ」が一般的。

2010年のデータだけど、全国のうどん屋店舗数は28,006軒で、そば屋の28,747軒とほぼ同数。
人口10万人あたり店舗数は21.96軒となっている。
全国で最もうどん屋が多いのはうどんの本場、香川県で人口10万人あたり65.77軒。全国平均の3倍の店舗数だ。

兎に角、うどん県と言っても、当たりはずれもあり、個人の好みによって評価が全く違うことになる。
いずれにしても、実際に複数の店を食べ歩いて確かめるほかはない。

僕は先日ゴールデンウイークに車で食べ歩きをしてみた。
というのも、実家が明石の僕としては、うどん巡りに、大きく2種類のルートがあるからだ。
僕の実家から香川県へは岡山経由で瀬戸大橋を渡るルートで行けば3時間とかからない。
しかし日本1小さい県といっても県内各地にうどん屋は点在し、山奥や田園の中に店を構える評価の高い店も沢山ある。
この場合、車で行くしかない。

実際、1番人気のがもうどんへ最初に行ってみたけど、臨時休業で、お土産物だけを販売していた。
2件目ではなかむらへ行き、やっと食べることができたが、それでも駐車場の行列と店内の行列だけで20分は待たなければならなかった。
次の目標であった長田in香の香では100人近い行列ができていて、すでに本日完売だった。
仕方がないので、できるだけ遠いところの店として県最西部である観音寺市の「一般店」のつるやへ行ってみたが、これは完全にはずれだった。
まー観音寺市ではもうひとつの目的であった銭形砂絵を観る目的が達成されたのでよかったが。


もう一つのうどん巡り方法としては高松市内を散策する方法である。
今回はこの方法を採ったのでこれを記しておく。

2013/6/1 (土)
東京(羽田)空港発 07:20発 ⇒高松空港着 08:35着
この飛行機に乗るには6時前の電車に乗らなければならない。

空港到着後はリムジンバスで50分690円で市内中心地である瓦町で下車する。
その後は、市内に点在するレンタルサイクルを借りて巡ることになる。

手続きは簡単で利用者証を作成(無料)すれば1か月このカードでレンタルでき
しかも6時間100円で市内に点在する7か所のレンタサイクルポートのどこでも返却が可能なのだ。


高松市街は完全な平地であり、半径10キロ県内において自転車移動が打って付けなのだ。
※一日3件以上のはしごをするつもりなら、麺は小に限る。
 小と言っても通常の東京のうどん屋の量とほぼ同じだから。
 また、無計画に天ぷらなどのトッピングをさける。
 前日は夕食を軽めにし、朝食は抜いておく。
まず、僕が1番に向かったのが手打十段うどんバカ一代通称「バカ一代」。


ここは瓦町からだとチャリで5分とかからない。
ただ民家の中にポツリとあるので、土地勘がないならiPhoneのナビアプリを使ってたどり着く。
※iPhoneではうどん県アプリが複数無料でダウンロードできる。
店は完全セルフであり、幸いにも朝早かったのでギリギリ並ばずに注文でき
早速ここでしか食べられない釜バターうどん小を戴いた。



これは大正解だった。
注文してから茹でられる麺は腰が程よく、卵、バター、黒コショウと
トッピングの葱、天かすが相まって旨いのなんのって。
幸先よく1店を制覇でき、次に向かったのがさか枝



注文したのはイリコ出汁のかけ小。


この日の高松天気は曇りで、朝の気温は20度を切っていた。
少し肌寒い中、このダシ汁が最高に暖まる。
まずはこの2店目までは計画通り。
さてこの後、どこへ向かうか決めておらず、とりあえず松下製麺所にしようかとナビを頼りに自転車を進めていたら11時前で
開店もしていないのに行列ができているところを発見。
調べてみるとそこは竹清というセルフ店。

10:40で僕もその行列に並び、店の特徴をガイドブックで調べてみた。
するとここは高松でも人気第1になるくらいの店で
一番の売りは半熟玉天を考案した店だとのこと。
開店するころには行列が3倍に膨れ上がっていたけど
タイミングがよかったので、すぐさま店内に入れた。
勿論注文したのは小170円+半熟玉天100円
※6月から10円くらい値上げしてました。

この半熟玉天。注文してから麺を受け取るまでに揚げてくれる。
※セルフの店によくある天ぷらは出来たてを期待してはならない。
 余程タイミングがよくなければ、ほとんどが冷めてしまったものでトッピングすることになる。
噂にたがわず、ここは次回来たとしてもはずせない。

腹ごしらえもできたところで、この後は高松市内巡り。

まずは玉藻(たまも)公園へ向かった。
ここは堀の水が珍しく海水である高松城址である。
本来ならここよりも栗林公園へ行くところであるが
以前、家族旅行で既に訪れていたのでここはパスした。

たどり着いてみるとシンボルである櫓が道沿いからみえたものだから
中に入ることはせず、スルーした。
園内は有料140円で披雲閣という藩主が生活する場所としての御殿があるらしいが
熊本城の本丸御殿ほどでもないようだったからだ。


地方都市に訪れた場合、僕が一番観たいのはそこで生活をしている人が訪れる商店街。
高松には商店街のほぼ全てを覆うアーケードは総延長が2.7kmあり、総延長では日本一の長さを誇る丸亀町商店街がある。

この商店街を中心に並行して脇道にそれた商店街もアーケードだらけである。

丸亀町商店街が基本的に自転車走行は禁止であるが他の商店街は大丈夫なので
回り道しても移動がしやすく生活者にとって不便がない。
ただこの日は天気のせいもあってか、熊本の下通りに比べると人が疎らだった。
また他の商店街はシャッターだらけで、地方の都市計画の失敗例にもなっているようだ。

余談であるが
目抜き通りだけに人の流れが集まるようでは都市計画のマーケティングでは失敗なのだ。
東京においても池袋がその例で、裏通りも栄える成功事例は渋谷、表参道、六本木となる。

取り分けじっくり観光する場所でもないことからドトールで一服した後、瓦町にもどり自転車を返した後、
今回のメインイベントである金毘羅さんへと向かうため、琴電にのって西へ向かった。
到着駅は琴電琴平駅であり瓦町駅からは50分くらい電車に揺られることになる。

この電車...改札はIRUKAカードというPASMOやSUIKAなどと同じくプリペイドカードがあるのだが
5月に全国統一されたシステムに対応していない。
しかも切符は昔さながら駅員が切符を切る方法でIRUKAカード以外は自動改札が使えない。

こんなこともまた、地方へ旅に来た実感を感じられるものなのだが、もっとそれを感じたのが電車に乗ってから。
なんと市街地を離れた後、田園風景の中を走る間、よく脱線しないなと思うほど揺れるのだ。
これが功を奏したのかは別として、終着駅の琴電琴平駅に着いた後、トイレに駆け込み
午前中に口から入れたものがすべて消化されたようになった。


たどり着いた駅舎は瓦葺で趣がある造りになっており、さすが神社の町と思った。...がっ!
この後、宿泊先である琴平リバーサイドホテルへの道なり、できたばかりのソープランドがあるではないか。
これには風情を感じようとしていた気持ちが萎えてしまった。
勿論、写真などにする気もない。

チェックインの手続きを終えて、荷物を預かってもらった後、金毘羅さん詣でをするため参道へ。
雲行きが怪しかったので、富士登山用に買ったストックと傘とペットボトルを持って登ることにしたが
これはこれで結果的にちょうどいい荷物だった。

金毘羅さんの最初には土産物屋街があり、そこで竹の杖を無料で貸してくれるのだが
返す時には同じ店で返す必要があり、ついでにお礼として土産を買わせるというシステムになっているのだ。
土産といってもご当地ならではといった名物はない。
兎に角僕が今回、金毘羅さんを登りたいと思ったのも、
7月の富士登山前に自分の足腰がどこまで大丈夫なのかを知るためだ。

さて、話は本題に戻って金毘羅さん詣でについて。

金毘羅さんは象頭山の中腹に鎮座し、参道の石段は本宮までは785段、奥社まで登ると1368段にもなる。
金刀比羅宮の由緒については二つの説がある。一つは、大物主命が象頭山に行宮を営んだ跡を祭った琴平神社から始まり、中世以降に本地垂迹説により仏教金毘羅と習合して金毘羅大権現と称したとするものである[3]。もう一つは、もともと象頭山にあった真言宗の松尾寺[4]に金毘羅が鎮守神として祀られており、大宝年間に修験道役小角(神変大菩薩)が象頭山に登った際に天竺毘比羅霊鷲山(象頭山)に住する護法善神金毘羅の神験に遭ったのが開山の縁起との伝承から、これが金毘羅大権現になったとする[5]。なお、別の説として、『生駒記讃陽綱目』の金刀比羅宮の條によれば、延喜式神名帳に名が見える讃岐国多度郡雲気神社が金刀比羅宮という記述がある。

詳しくはこのサイトが一番わかりやすい。

参道に入ってからは、週末としてはまずまずの賑わいで老若男女が昇り降りしている。
ただ、土産物屋は店員がほとんど老女で、売り込みの精気もなく、客は皆素通りしていた。
それは別にして、この建造物群はとてつもないものである。


旭社

本宮

本宮にたどり着くまでには旭社など多くの重要文化財があるが
人力しかない時代によくこれだけのものを造ったなと感心する。

本宮からは讃岐平野が一望でき、晴れた日には瀬戸大橋も観られるらしいが
この日は曇り深くそれは観られなかった。
しかし、丸亀城や讃岐富士などは十分確認できたので絶景であることは間違いない。
 

本宮到着後、ほとんど人は降りて行ったようだが、あっけなくたどり着いてしまったので
ここは奥社にまで行ってみた。
その道中、雨が降り出してきたが参道を覆う木々が雨除けになって半分は傘なしでも登っていけた。

奥社

さすがに休みなく1368段を登り切った後は息が切れたが大山登山の時に比べれば大したことはない。
下りかけた頃に雨は本降りになって、登りに見た本宮からの景色は何も見えなくなっていた。
本宮では「幸福の黄色いお守り」 と「ミニこんぴら狗」のセット(1,500円)を購入。

下山後、ソフトクリームを食って一服した後、、参道とは逆方向の商店街へ寄ってみた。
するとそこは人っ子ひとりいないシャッター街である。
要するに現在の金毘羅さんは参道以外の門前町としては、完全に寂れてしまっているのだ。

ホテルの部屋へ入ってみたら、予想以上いい部屋だった。


一服した後、1Fにある浴場へと行ってみたら、ちょうどいい湯加減の貸切状態で
普段シャワーしか浴びない体を久しぶりに湯船につけることができ、いい汗がかけた。
値段といいこのホテルはお勧めである。
唯一の欠点は部屋の空調が温度調節できないことだ。
しかしタバコを吸わない人だったら問題はないと思う。

18:30から2Fのレストランで夕食を摂ることに
 

まずはレモンサワー400円を2杯飲みほして、瀬戸内の幸で作られた料理に舌鼓を打った。
これは美味!
しかも心配していたうどん料理はなかったのでさらによかった。
その後、生酒の冷1200円を注文したが、これも切れがよくほろ酔い気分になるにはちょうどよかった。
しばらくして鯛の荒煮が登場したが、これがまた酒にぴったりだった。

よくよく見てみるとこれを出してもらえたのは僕ひとりだけだったみたい。

他の客が部屋へ戻った後、配膳をしてくれている女中さんに
「金毘羅さんはさびれているのか」尋ねたら
即答で
「年々さびれてます。盛り上がるのは正月と10月10日だけ」ときっぱり言われた。
その10月10日の祭りも大名行列のようなものらしくて、祭りらしいどんちゃん騒ぎが一切ないらしく
高知のよさこい踊りに比べたら退屈なものらしい。
その女中さんは高知の出身で高知のことをいろいろ聞かせてもらった。

高知で表現として男性の「いごっそう」、女性の「はちきん」という言葉があるが
「はちきん」という本来の意味は「好きもの」のことらしく県内では言わないほうがいいとのこと。
高知の酒は大辛口の船中八策でも甘いほうで土佐の鶴の辛口のほうがいいとか。

そんな話から始まって好きな音楽の話やら姪っ子さんの話やら聞かせてもらっていたら1時間以上過ぎていた。
とりあえずこの日はフル稼働だったので部屋に戻ってゆっくりした後、次の日に備えて早めに就寝した。


2013/6/2 (日)
この日は朝食を7:30に予約していたので、再び2Fのレストランへ


これは追加予約したもので1000円はしたが、お決まりのビュッフェではなく値段相応に旨かった。

食後、部屋に戻りいつものTBSサンデーモーニング8:00~10:00を見終えてチェックアウトした。
前日に予定していたことはすべてやりつくしたので、琴電に乗り高松方面へと向かい片原町駅で下車。
とりあえず前日に玉藻公園近所に見つけていた地上最強のウドン ゴッドハンド


注文したのは釜玉の小とお握り370円だったっけ。

ここも有名なだけあってあたりである。

しばらくして、再開発で綺麗になったと聞いていた港方面へと歩くことにし
高松シンボルタワーをぶらついた。
最上階に上ってみたら、展望台はなくレストランで披露宴が行われていただけだったのですぐ帰り
残り時間をつぶすため、駅前で自転車を借りて、うどん市場兵庫町店へ。
注文したのは肉玉ぶっかけの小と天ぷら2品

肉玉ぶっかけは旨かったが
やっぱり天ぷらはやめたほうがよかった。
もし天ぷらを頼むのなら、かけを注文し、だし汁に浸すに限る。

そうこうして前日に調べていた半空というカフェへ行ってみたら臨時休業。
それにしても臨時休業が多いものだ。
自転車でたどりついているからいいようなものの、
歩いていたならとんだ無駄な時間になってしまう。
仕方がないので瓦町駅のトイレで用を足した後、
あまり時間がなかったので、丸亀商店街のサンマルクカフェでアイスコーヒー小200円を飲みながら
ガイドブックを見て、この二日間の旅を振り返っていた。

※高松でうどんめぐりをする場合、トイレのある場所をチェックしといたほうがいい。
 大根おろしやショウガをたっぷりかけるとお通じがよくなるので。
 ちなみに瓦町なら駅のテラスから入る場所にある。
 高松築港寄りの丸亀商店街あたりなら三越の中にある。

瓦町で自転車を返した後、14:06発のリムジンバスに乗り高松空港へ。


高松空港発 15:25発 ⇒東京(羽田)空港着 16:40着
部屋についたのが17:30くらい。

やっぱり、うどん県だけあって本場うどん巡りはまた行ってみたと思った。
それに高知も。

おしまい。